パーキンソン病治療の最前線
近年、パーキンソン病の治療はますます進化を見せています。
そもそもパーキンソン病治療の難しさは、罹病期間が長くなると症状が複雑化し、薬の効果が安定しなくなる点にあります。幻覚や疲労感などの多彩な非運動症状で患者さんの生活の質(quality of life: QOL)が下がってしまったり、薬の効果時間が減少するウェアリングオフによって薬を飲んでいるのに動けなくなってしまったり、効果の出ているオン時間にジスキネジアという不随意運動が生じてしまったり……ということが起きるのです。
これまで、レボドパというパーキンソン病治療の中心となるキードラッグの他、様々な薬が登場してきましたが、近年はデバイス補助療法(device aided therapy: DAT)に注目が集まっています。脳深部刺激療法(deep brain stimulation: DBS)、収束超音波治療(focused ultrasound: FUS)という脳に直接処置を加える治療が行われてきましたが、身体に加える侵襲は比較的大きいものでした。その後、そのレボドパをいかに安定して体内に投与するか、すなわち「古い薬の新しい投与法」としてのDATが開発され、
DATというと、これまで、胃瘻造設をしてそこからレボドパ製剤を注入する経腸療法(levodopa-carbidopa intestinal gel: LCIG)が登場しました。
さらに持続皮下注射治療であるレボドパ・ホスカルビドパ持続皮下注入療法(continuous subcutaneous foslevodopa/foscarbidopa: LDp/CDp)が登場し、注目を集めています。これは、機器を用いて24時間皮下注射によってレボドパを投与する治療です。持続皮下注入製剤なので身体への侵襲は少なくて済むため、当施設でも導入例が増えています。

一方、日本発の大きなニュースは再生医療です。2026年3月6日、厚生労働省はiPS細胞由来のドパミン神経前駆細胞製品であるアムシェプリを、条件及び期限付きで承認しました。国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)もこれを、世界初のiPS細胞由来治療製品の実用化と位置づけています。ただし現段階で「根治治療」と言い切るのは早く、治療薬も条件付き承認であり、市販後の安全性・有効性の検証、適切な患者選択、費用や実施施設の整備が今後の鍵となります。それでも、日本がパーキンソン病に対する再生を実臨床へ一歩進めた意義は大きいと感じます。
一昔前では想像もしなかった治療が実用化に向けたステップを踏んでいるわけですが、一方で、最新技術を無条件で礼賛する姿勢は危険です。各治療のエビデンスと限界を見極め、患者ごとに最適な治療法を最適なタイミングで導入・調整する姿勢が、我々臨床医・研究者には求められていると考えています。
文責:パーキンソン病研究チーム